「バーリング加工という言葉を聞いたけど、どんなものだろう?」
「バーリング加工指示は、どんな時に行えば良いのだろう?」
上記のような板金設計初心者向けに、バーリング加工について設計者の観点で分かりやすく解説したいと思います。
バーリング加工とは?
バーリング加工は、板金部品の穴の周囲に立ち上がりをつける加工の事です。
穴フランジ加工と呼ばれる事もあります。
加工イメージとしては、板金加工機メーカーで有名なAMADAの提供する上記動画がシンプルで分かりやすいです。
バーリング加工の用途
材料にネジを加工(タップをきる)しようとしたとき、板厚が薄すぎると加工が困難です。
また、ネジは3山以上かかるようにしようと設計業界ではよく言われており、板厚が薄い場合、3山分確保できない場合があります。
そういった場合に、バーリング加工指示を入れます。
バーリング指示を入れると、穴部分の板厚は増している事になりますので、ネジの3山分を確保する事が可能となります。
材料板厚とバーリング加工の必要有無の判断方法
ネジのピッチから判断するのが、簡易的で一番分かりやすいでしょう。
ねじピッチ早見表より抜粋
例えば、上記表からM2の並目ねじのピッチは0.4である事が分かります。
ねじピッチというのは、ねじ山とねじ山の間の長さの事です。
つまりこの場合、ねじのかかり代が3山必要ということは材料に少なくとも「t1.2mm(0.4mm x 3山)」の板厚が必要だという事が分かります。
よって「板厚t=1mm」の板金にM2並目ネジを使いたい場合は、板厚が足りないのでバーリング加工指示をする必要があるという事になります。
ねじを3山以上かける根拠について
ねじは3山以上かけろの根拠について、上記の参考記事と同様、自分も知りません。
しかし、いろんな人が言っていますし、少なくともかかり代が少なすぎるとうまく締結できないことは明白です。
バーリング加工をしても他に問題(部品の干渉など)がおきないのであれば、初心者の内は3山以上確保する設計にしておくことをおすすめします。
バーリング加工の下穴や立ち上がり寸法
バーリングによる立ち上がり寸法等は、下記リンク先がわかりやすいです。
バーリング加工の図面指示方法
二次元図面には「M2バーリング(紙面表側方向突き出し)」のように、呼び寸法(ネジ径)とバーリングの立ち上がり方向を書いておけば板金屋に通じることが多いです。
私がいた業界(というか、使っていた板金業者)では、「M2バーリング」と書いておけばタップまで切ってくれていました。
しかし、これではタップを切る必要があるか明確でない(M2のタッピングねじを使うと想像される可能性がある)為、タップ加工が必要ならタップの指示まで明確に入れておくべきという意見もあります。
確かに、指示は可能な限り明確になるようにしておくべきであると思います。
二次元図面には、「M2バーリング、タップ加工、並目(紙面表側方向突き出し)」とまで詳しく明確に書いておけば、どこに図面が出たとしても問題なく意図が伝わるでしょう。
バーリング加工の図面指示方法(実際の図面)
上記の板金部品に対して、赤矢印方向に「バーリングの立ち上がり」と「M3(並目)のタップ加工」を指示したいとします。
図面では上記のように矢印付きの引出線で「2xM3バーリング、タップ加工(並目)、紙面裏側方向突き出し)」のように指示します。
バーリング加工は3Dデータに反映する必要があるか
最近では2D CADでなく3D CADで設計を進める会社も増えているでしょう。
その際「3Dデータにバーリングは反映する必要があるかどうか?」を気にされる初心者の方もいると思います。
参考に私の意見を書いておこうと思います。
基本的に3Dデータにバーリング加工は反映しない(時間効率優先)
板金業者に部品手配する場合、私は必ず「3Dデータ(step)、2D図面(dxf)、2D図面(pdf)」の3点セットを添付するようにしています。
よって、2D図面を見ればバーリング加工が必要な事は明白ですので、バーリングの立ち上がりは3Dデータには反映していません。
穴がたくさんあったり、手配したい部品の数が多ければ、チリも積もれば山となるで、時間もとられますからね。
M3のバーリングが必要な場合は、単純にφ3の穴を開けているだけです。
例外:干渉を見たい場合はデータに反映する
設計上、スペースがかなり厳しく細かく干渉を見ないといけないような場合は、バーリングの立ち上がりも正確に3Dデータに反映します。
板金部品の手配方法
出図後の部品手配は「3Dデータ(step)、2D図面(dxf)、2D図面(pdf)」の3セットを添付して手配するのが最も間違いがありません。
3Dデータは使用しているCADの生データではなく、どのCADでも開く事ができるようにstepやparasolidのような中間データにして渡します。
【PDFデータがあると】
・文字化けなどに対応できる。
・寸法交差などを把握できる。【2Dデータがあると】
・3Dから2Dなどの、変換作業を削減できる。
・寸法公差などを把握できる。【3Dデータがあると】
・形状全体を回転させて、形状認識が一瞬で出来る。このように、3点のデータが揃っていると、製作側の不明点がほとんどなくなることで、手配側への問い合わせが無くなります。よって、お互いの無駄な時間が削減されることになります。各メーカーの設計部署などをはじめ、現在ではこの3点セットにて、試作手配がされるケースが増えています。
上記は、私も使用したことある大阪の試作板金会社のページからの引用です。
板金業者側からしてもこの3点セットが嬉しいと書いてあります。
可能な限り、3点セットを用意して手配するようにすると良いでしょう。
バーリング加工とは?設計観点でわかりやすく解説【まとめ】
- バーリング加工は、板金部品の穴の周囲に立ち上がりをつける加工の事
- 板金の板厚が薄く、ねじ3山分を確保できない場合によく利用する
- 加工指示は2次元図面で行う事が多い
今回はバーリング加工について、設計者の観点から初心者向けに解説してみました。
参考になれば幸いです。
また、板金設計全般の初心者向け基礎知識に関しては、上記記事に書きましたので興味のある方は合わせてご覧ください。
コメント