樹脂やゴム部品の試作検討で使われる製造手法の1つに「真空注型(読み方:しんくうちゅうけい)」というものがあります。
私も部品試作時に何十回、何百回と使ったことがある製造法です。
今回はこの真空注型について、製品設計観点で基礎知識を初心者向けにわかりやすく解説したいと思います。
一通りの知識をつけた後は、別途また自分で勉強したり、製造業者とのやりとりをしたりして、より深く理解できるようになれば良いかなと思います。
真空注型とは?
真空注型は「CNCや3Dプリントで作られたマスターモデルを元にシリコンゴムやプラスチックで型を作成し、真空状態の層の中で注型用の樹脂を注ぎ込み物を作る成形法」のことです。
射出成形金型と違い、多くの数量を作ることができない代わりに、型費が安くつくので試作でよく使われます。
私は数十個程度の試作用途でよく使います。
真空注型の製造工程
工程については、下記サイトで紹介されている画像がわかりやすいです。
- 3Dデータを元に、マスターモデルを3Dプリント(光造形)もしくは切削(CNC)で製作
- マスターモデルを元に、型を製作
- 型に真空注型用の樹脂を注ぐ
- 型から出来上がった部品を取り出す
上記の流れで製品は製造されます。
複数個部品が必要な場合は、3と4の工程を必要分繰り返します。
真空注型用の樹脂材料
製法が全く異なるので、射出成形用の樹脂ペレットをそのまま真空注型用に使うことはできません。
注型用樹脂としては、2液性のウレタン系がよく使用されます。
ABSに似せたABSライク、PPに似せたPPライクのようなものがあります。
真空注型 | 株式会社クロスエフェクトより引用。
射出成形で作った最終製品とは材料や物性が異なるため、強度テストなどには向いていません。
真空注型で作る試作はあくまで「形状、デザイン性、使い勝手、雰囲気」を見るためのものと思った方が良いでしょう。
真空注型用の型(プラスチック部品を作る場合)
真空注型でプラスチック部品を作る場合、型にはシリコンゴムがよく使用されます。
真空注型用の型(シリコンゴム部品を作る場合)
試作部品としてシリコンゴムを作りたいときは、型にシリコンゴムは使えません。
注型用樹脂をシリコン、型をプラスチック(アクリル等)で作ります。
参考真空注型/シリコンゴム加工 – 試作メーカー渡辺製作所-単品加工OK
真空注型の用途と特徴
真空注型の用途と特徴を簡単にまとめておきます。
用途
- 樹脂部品の試作
- ゴム部品の試作
射出成形と比べて型費が安く納期も短いため、試作用途で使われます。
特徴
- シリコンゴムなどで型を作るため、耐久性は良くない
- 数十個のプラスチック部品やゴム製品の試作に良い
- ゴム型の場合、アンダーカットがあっても多少の無理抜き可能
- 射出成形品と物性が異なるので、強度テストとかには適していない
射出成形での量産品とは異なる点も多いので、注意しましょう。
真空注型のことがよくわかる動画
文字だけ見ていても、いまいち理解できないことが多いでしょう。
真空注型を理解する上で役に立つ、わかりやすい動画をまとめましたので、見てみてください。
なお、真空注型は英語では「vacuum casting」と言います。
海外動画や海外ウェブサイトで情報をもっと調べたくなった場合はこちらの言葉で検索すると良いです。
真空注型の全体概要がわかる動画です。
真空注型用のマスターモデルを作る動画です。この動画ではCNCではなく3Dプリントでマスターを作っています。普通の3Dプリント工程を知っている人は既知の内容だと思うのでパスして良いと思います。
真空注型で良く使われるシリコン型の作り方が良くわかる動画です。黒い部品がマスターモデルです。
1つ前の動画の続きです。シリコン型にウレタン樹脂を注ぐ工程が良くわかる動画です。
真空中継を理解する助けになるウェブサイト
記事中ではふれなかったものの、役立ちそうだと思ったウェブサイトをリストにしておきます。
真空注型とは?製品設計観点で基礎知識をわかりやすく解説【まとめ】
- 真空注型は、CNCや3Dプリントで作られたマスターモデルを元にシリコンゴムやプラスチックで型を作成し、真空状態の層の中で注型用の樹脂を注ぎ込み物を作る成形法。
- 型の耐久性は低い。数十個程度の試作用途でよく使う
- 注型用樹脂としては、2液性のウレタン系がよく使用される
- 真空注型でプラスチック部品を作る場合、型にはシリコンゴムがよく使用される
- 射出成形品と物性が異なるので、強度テストとかには適していない
- 数個から数十個作って「形状、デザイン性、使い勝手、雰囲気」を見るのに適している
今回は「真空注型って何?」という初心者に向けて、基礎知識を簡単に解説してみました。
参考になれば嬉しいです。
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